新幹線3人殺傷事件について考える

2018年6月16日

新幹線3人殺傷事件

6月9日に東海道新幹線で刃物を使用した無差別殺傷事件が発生しました。

当店では事件直後から、護身用品の注文が全国から殺到しました。このことが、事件が社会全体に与えたショックの大きさを物語っています。

安全と信じられてきた新幹線でいったい何が起こったのか、そして新幹線の車内では実際にどのようなリスクがあり、乗客としてどういった対策が考えられるのかを考えてみます。

事件の概要は次のようなものでした。

新幹線3人殺傷事件の概要

2018年6月9日午後9時45分ごろ、走行中の東海道新幹線東京発新大阪行きのぞみ265号が新横浜-小田原間走行中、12号車で無差別殺傷事件が発生した。

容疑者の小島一朗容疑者(22)が女性2人を刃物で切りつけ怪我を負わせ、さらに止めに入った兵庫県尼崎市の会社員、梅田耕太郎さん(38)を刺殺した。その後、小田原駅で警察官に逮捕された。

後部席にいた目撃者によると、小島一朗容疑者(22)は犯行直前に突然立ち上がり、刃物のようなものを隣席の女性に無言で振り下ろしたという。

この事件で被害女性2人のうち1人(27)は、左肩などに切り傷を負ったが軽傷、もう1人の女性は頭部や首などの切り傷からの出血が多かったため入院となった。事件発生後、止めに入った梅田耕太郎さん(38)は容疑者ともみ合いになり、殺害された。

事件発生後、乗務員がマニュアルに沿って座席の座面を取り外し、盾として活用するよう乗客に呼びかけていたという。座席の座面は上に持ち上げることで簡単に外すことができる。この緊急時の座面使用法は乗客には周知されておらず、乗務員だけがマニュアルで知っていた。

新幹線の車内には、横浜市の日産スタジアムで行われた韓国の人気デュオ「東方神起」の公演の観客が多数乗車していたとみられ、車内は一時騒然となり、逃げ惑う乗客でパニックの状態だったという。

まず、女性を守るために犯人に立ち向かい、犠牲となった被害者の方のご冥福をお祈りいたします。

この事件は新幹線の車内で発生しました。

そこで、新幹線の車内という環境がどれだけ特殊なのかということを踏まえ、新幹線の移動におけるリスクを考えてみます。

長距離列車の特殊性とリスク

新幹線のみならず、長距離を移動する乗り物では以下のような危険性が考えられます。これは、死んでもいい、捕まってもいいという自暴的な犯人にとっては犯行しやすい環境とも言えます。

長時間の隔絶された密室空間

新幹線は長距離を移動します。停車駅と停車駅の間も大きく離れており、新幹線とはいえ長いと1時間以上は次の駅に着きません。その間は移動中なので、完全に隔絶された逃げ場のない密室となります。

警察が駆けつけることができない

その間に凶悪事件が発生した場合においても、もちろん110番しても警察は駆けつけることができません。対処できるのはたった1人の車掌か、あとは居合わせた乗客のみです。

全員が進行方向に向かった座席の向き

全員が進行方向に向かって座っており、背後で起きることに気がつきにくい特徴があります。何かが起きても、気づくのが遅れる可能性があります。

イヤホンや就寝など

新幹線の移動では長時間を過ごすことになります。そのためイヤホンで音楽を聴いたり、就寝する方もいます。周囲の音が聞こえていないと、異常な事態に気づきにくく、対応が遅れる可能性があります。

狭い通路の幅

新幹線の車内通路は人がすれ違うのがやっとです。通路の幅が狭いため、犯人が通路で強行に及んでいる場合には、複数人での対処が困難です。何人で対処しようとも、犯人と接する人にとっては1対1で立ち向かっているに等しいリスクとなります。

このように、新幹線では凶悪事件が起きたときに様々な不利な点があると言えます。これは新幹線に留まらず、長距離の特急列車やフェリーなどの船舶でも同様と考えることができます。

私たちが出来る対処の方法

当然ながら一般的に言われている対処はほとんど役に立ちません。

110番で警察を呼んでも警察は来ることができません。防犯ブザーを鳴らしたところで犯人が犯行を止めるとは到底思えません。助けを求めても実際には恐怖のあまり集団パニックが起こり、助けは得られないでしょう。今回は勇気ある会社員が命を投げ出し犠牲となって被害女性を救いましたが、これは希なことと考えるべきです。

こういった中で、私たちが取るべき行動は逃げるか立ち向かうかの2つしかありません。

逃げる

まずは逃げることを考えるべきです。可能であれば逃げることが最優先です。逃げ切れれば被害には遭いません。

新幹線の通路は狭く、ほぼ1人分の幅しかありません。そこに乗客全員がなだれ込み、逃げようとするわけですから通路はあっというまに乗客で飽和し、身動きがとれず逃げられなくなると予想されます。

トイレに逃げ込んで鍵を閉めるという方法はとても有効です。しかし当然ながらトイレの数は限られており、全員が避難できるわけではありません。普段から有事に備え、トイレの近くの席に座るのは有効かもしれません。

立ち向かう

逃げられなかった場合、犯人の凶行の餌食になるくらいなら立ち向かう他ありません。この場合に有効なのは護身用品しかありません。催涙スプレーを基本に、スタンガンや特殊警棒も効果があります。

いずれにしても、犯人が凶器を持っている場合には盾が必要です。新幹線なら座席をはずして盾の代わりにするか、近くにある旅行カバン、おおきなバッグなどを活用し、盾で身を守りながら護身用品で犯人の動きを封じます。

相手が正面を向いているならスタンガンでの威嚇や催涙スプレーの使用が最適です。

相手が背を向けているのであれば、特殊警棒の打撃が最も効果を期待できます。

相手が馬乗りになってきたら、至近距離の相手を振りほどくにはスタンガンの電撃しか方法がありません。

いずれにしても、特殊警棒で相手を倒した場合でも、スタンガンで相手を倒した場合でも、最後には催涙スプレーを顔面にかけさえすれば、それ以降の数時間は犯人は立ち上がることすらできなくなります。

ちなみに催涙スプレーを車内で使用しても周囲への被害は限定的です。付近の人は目や鼻に痛みを感じるかもしれませんが、殺人を止めるための代償として十分に許容できるものです。

最後に

私たち一般人が犯人に立ち向かうといのは、逃げられないときの最後の手段です。しかし新幹線の車内などでは、その特殊な環境から、今回のような事件が起きたときには立ち向かう他ないという状況が起こりえます。

立ち向かわなければ殺されるといった状況では、勇気を振り絞り立ち向かうしか手立てはありません。最後に自分の命を守るのは自分しかいないということです。

警察も来ることができず、自分の身は自分で守るしかないという特殊な環境が、新幹線の車内という日常的な場所で起こりえるということが、今回の事件で改めて浮き彫りとなりました。

このような状況で自分の身を守るためには護身用品の使用以外に方法はありません。

基本は催涙スプレー、さらに加えて特殊警棒かスタンガン。そして犯人と対峙したら何でもいいので何かを盾にして護身用品を使用する。この方法が現在のベストな対策です。

移動する際には、その場所の危険性とリスクを十分に考え、普段からしっかりと準備をしておくこと、そして有事の際には勇気を持って自分を守ることが何よりも大切です。