対人用の催涙スプレーで熊は撃退できるのか?

2019年1月16日

催涙スプレーは熊に使用できるのか

催涙スプレーは人間に効果がありますが、熊を始めとした動物には使用できるのでしょうか?

このページでは催涙スプレーの適用対象の範囲について説明します。

※注意 このページの説明は、当店の催涙スプレーのような強力催涙スプレーを前提としています。弱い催涙スプレーは対象外なのでご注意ください。

催涙剤の成分

対人用の催涙スプレーが噴射する催涙剤は、一部の製品を除きほとんどの場合OCです。一般に販売されている熊よけスプレーの催涙剤も同様にOCです。(OCとはカプサイシンを主成分とした自然由来の刺激物で、トウガラシの辛みと同じ成分です。)

催涙剤の成分はOCを始めとして数種類存在しますが、OC催涙スプレーは人間だけでなく動物全般に効果があります。

効果が認められるのは人間を始め、熊、イノシシ、猿、犬など動物全般です。

どこに効くのか

催涙剤は刺激成分として粘膜に強く作用します。

具体的には目、鼻、喉です。

これは熊であっても同様です。

従って、熊に噴射する場合には顔面に向けて噴射します。

特に効くのは鼻

熊とはいえ何かが飛んでくると目をつむる可能性はあります。

そういった中で、確実に効果があるのは鼻です。

熊は特に嗅覚が鋭く、周囲の状況把握のために匂いを嗅ぎます。

そのため、催涙剤を浴びても同様に匂いを嗅ぐと考えられます。人間のように無意識に息を止めるようなことはないでしょう。

催涙剤は鼻の粘膜に付着しても強烈な激痛を引き起こします。

目への影響も避けられない

顔面に噴射剤を浴びた熊は、一瞬は目を守るため無意識に目をつむるかもしれません。

しかし、顔全体には毛が密集していますし、浴びた催涙剤はそのままが頭部全体に付着したままになります。そして、手で拭おうとしても熊の手では容易ではありません。

手で目を拭ったり、周囲にある木や枝に頭部を擦り付けて催涙剤を拭おうとするかもしれませんが、それは逆に毛に付着した催涙剤を目に運ぶ事になり、さらに痛みは増すはずです。

熊と人間の使用距離の違い

催涙スプレーを人に使用する場合の実際の距離は、およそ2m〜3mと考えられています。それより近ければ相手に腕を掴まれる可能性がありますし、それより遠ければ命中が難しく、相手の表情など悪意の確認が困難でしょう。

しかし、熊に対峙した場合の2〜3mは近すぎ、とても安全距離とは言えません。熊の場合は出来るだけ離れた状態でも撃退できるのが理想です。

熊への使用は噴射形態が大切

催涙スプレーは最大でも5m程しか噴射できません。

しかし、催涙スプレーには噴射形態によって違いがあります。

対人用はほぼ液状噴射のモデルが標準です。量が多い水鉄砲のようなイメージです。

それに対し熊よけスプレーは霧状噴射です。消火器のようなイメージで噴射し、長く大気中に滞留します。

この噴射形態の違いは大きな差となって現れます。

結果的に熊よけスプレーは、熊に直接浴びせるだけではなく、熊とこちらの間に煙幕を張るような使い勝手になります。漂う霧状の催涙剤の煙幕を吸い込んだ熊は激痛に襲われ退散します。

対人用の催涙スプレーにはこの煙幕を張るような使用が出来ません。水鉄砲のように噴射された催涙剤はそのまま地面に落ち、大気中にほとんど滞留しません。また、地面に落ちた催涙剤の熊への影響力はゼロです。

こういった噴射形態の違いから、熊よけスプレーは対人用催涙スプレーと比べると噴射形態が熊撃退に適しています。

対人用催涙スプレーは熊には効かないのか

対人用催涙スプレーが熊に効かないのかというと、決してそのようなことはありません。

熊よけスプレーも、対人用催涙スプレーも、噴射する催涙剤の成分は同じOCです。

従って、正確に熊の顔面に浴びせることが出来れば、対人用催涙スプレーでも熊よけスプレーと同様に効果があります。

ただし、対人用催涙スプレーの実用的な射的距離は2〜3mです。熊と対峙した時の2〜3mは近すぎます。また、対人用催涙スプレーは熊よけスプレー最大の特徴である煙幕を張るといった使用が出来ません。

つまり、対人用催涙スプレーは命中すれば熊を撃退できるが、それは現実的に難しいと言えます。

とはいえ非常時にあるとないでは雲泥の差

対人用催涙スプレーを熊に使用するのは困難とはいえ、非常時にあるとないでは大違いです。

もし熊に襲われて、噛み付かれている、押さえつけられているといった至近距離の場合、もし手元に催涙スプレーがあれば躊躇なく使用すべきです。顔面に浴びせることができれば、熊は退散します。

これが何も持っていない場合であれば、人間の力で難を逃れるのは至難の技でしょう。

日頃対人用として催涙スプレーを携帯している方は、万一の時には熊であっても使用出来ることを覚えておいてください。

熊用として考える場合には熊よけスプレーを

これまで述べてきた通り、対人用の催涙スプレーであっても、熊よけスプレーであっても、熊には効果があります。しかし、熊よけスプレーは熊の撃退に適している専用スプレーです。

よほどの事が無い限り、熊対策としては熊よけスプレーを選ぶようにしてください。

熊には熊よけスプレー、しかし万一催涙スプレーしかない場合は迷わず催涙スプレーを使用すること。そして、自分が持っている熊よけスプレーや催涙スプレーの噴射特性や使い方をしっかりと理解していること。それが万一の時に身を守れるかどうかの大きな違いになってきます。

近年では里山の縮小から市街地でも熊が出没するようになってきました。過去には熊による死亡例なども発生しています。もし襲われた際には撃退できるように、普段から熊よけスプレーを備えておきましょう。

追記  北海道のエゾヒグマについて

この項は北海道のみに生息するエゾヒグマに限定した内容です。北海道ではない方は読む必要はありません。

北海道のエゾヒグマには注意

  • 当店の熊よけスプレーはエゾヒグマ(北海道のみに生息する大型種)には使用できません。エゾヒグマにはヒグマ専用の熊よけスプレーを使用してください。当店はヒグマ専用の熊よけスプレーは販売しておりません。
  • ヒグマ用熊よけスプレーの催涙剤は非常に高濃度な劇物です。熊にも深刻なダメージを与え、人間が浴びると失明や皮膚のただれといった深刻な後遺症が残る恐れがあり大変危険です。エゾヒグマ以外には絶対に使用しないよう注意してください。
  • 北海道以外の地域、並びに北海道でもエゾヒグマの危険がない地域では、当店の熊よけスプレーの使用が最適です。