【防犯護身のプロとして考える】現実的な煽り運転の対策方法

2019年2月12日

煽り運転

煽り運転の被害が注目されています。

煽り運転被害はずっと以前から存在していましたが、こうして注目されるようになったのは恐らくいくつかの大きな事件がきっかけです。

その他にも事件やニュースに至らなかったものを含めると、煽り運転は星の数ほど発生しています。(煽り運転で動画を検索するとその多さに驚かされます。)

私(執筆者:KSP店長の白石)は10年以上に渡り様々な防犯や護身に関わってきました。真の防犯や護身は、机上の理屈やきれい事だけでは実現しません。現実的な思考と対策が必要です。今回は煽り運転の現状と対策方法についてプロの目線で現実的に考えてみます。

煽り運転が注目され始めた理由

煽り運転は実は以前から今と変わらず存在していました。私は30年の運転歴の間に、何度となく煽り運転をされたことがあります。最悪の場合には深夜に数キロも追い回され、信号では相手が降りてきてドアを叩かれたこともあります。

ではなぜ近年ここまで煽り運転が注目されるようになったのか。それは、先ほど挙げた大きな事件もありますが、なんといってもドライブレコーダーとスマートフォンの普及が大きな要因です。

最近の車を見ていると、本当にドライブレコーダーの装着車両が増えました。私の車も当然ながらドライブレコーダーを装着しています。よく見かけるのは前方のガラスに固定しているタイプですね。

▲私の車に装着しているドライブレコーダー

ドライブレコーダーは車に乗っている間(エンジンが掛かっている間)は、防犯カメラのように常に録画をしています。本来は事故などの際に信号機の色や周囲の状況などを記録するためのものですが、常に録画しているということから煽り運転された場合にもその証拠が録画として記録されるわけです。また、ドライブレコーダーがなくても、同乗者がいれば同乗者がスマートフォンで動画を撮影したりできます。

さらに現在は、ブログやホームページを運営していなくてもSNSで動画を簡単にシェアできます。そのため事故未満の煽り運転であってもインターネットで数多く公開されるようになりました。インターネットのこうした変化も、身近な出来事を共有する手段として役立ち、煽り運転がより広く認識されるようになってきた理由です。

煽り運転の現実的な対処方法

煽り運転と言っても段階とタイプがあります。

そしてそれぞれのパターンにおいてまずは回避を試みることが大切です。うまく回避をすれば深刻なトラブルに発展する前に被害を防ぐことが出来る可能性があります。

煽られるきっかけを摘む

煽り運転をする人は怒りっぽい性格だったり、短気や自分勝手、わがままなど性格に問題があるのかもしれません。しかし特別な異常者を除けば、そういった人達も普段から常に怒っているわけではないと考えます。恐らくこれらの人達が煽り運転をしてしまうのには相応の理由があるはずです。(高速道路で停車させたり、暴力を振るう人は論外の異常者です。ここで言う「相応の理由」というのは決して煽り運転の加害者を擁護する意味ではありません。しかし加害者の心理を読み、回避方法を考えることは防犯上とても大切です。)このような理由を普段の運転中によく考えながら、相手が怒る原因を未然に摘み取ることはとても大切です。

例えば駐車場から道路に出るとき、合流地点で本線に合流するとき、車線変更をするとき、こちらは大丈夫と思って流れに合流したとしても相手にとっては無理な割り込みだと感じる場合があるでしょう。また、登坂車線がある上り坂でスピードが十分に出せないにも関わらず後続車に道を譲らなかったり、追い越し車線(右側車線)を走行車線(左側車線)の車と同じかそれ以下のスピードで延々と走っていたら、後続車はどう感じるのか。

このように意識的でも無意識でも、自ら煽られるきっかけを作らないことが大切です。煽り運転はあってはならないものですし、煽られればそれは被害者で、煽る側に非があります。しかし道路はみんなのものです。ちょっとした気遣いで煽り運転被害を未然に防ぎ、皆が気持ちよく道路を利用できればそれが一番です。

例えば車線への割り込みが少し無理がありそうだと思えば、割り込む前に相手の顔をしっかり見て深く会釈をするだけで相手の心象はずっと違うものになるでしょう。余裕があれば軽く手も挙げると良いかもしれません。

例えば追い越し車線を走行中は常にミラーで背後に気を配り(追い越し車線は追い越すために走行するのですから当然ですね)、もっと速い車が追いついてきた場合にはすぐに車線を譲る。走行車線に車がいて車線を譲れない場合であっても、左ウインカーを出しながら走行すれば後続車にも車線を譲る意志が伝わり、譲るまで時間がかかっても嫌な思いをせず余裕をもって待ってくれるはずです。

普段の運転から周囲のドライバーに気を配り、礼儀をわきまえ誠意を持って行動するだけで防げる煽り運転もあります。煽り運転は他の犯罪事件と同じで、未然に危険を察知して適切に行動することが被害を防ぐ第一歩です。

後方からの煽り運転

【状況】
恐らく最も多いケースで、後方の車両が無理に後方から車間距離を詰めてきて威圧したり、蛇行やパッシング、クラクションを鳴らすなどをして煽ります。

【回避方法】
とにかく早い段階で道を譲りましょう。譲れば済む場合もありますので、まずは道を譲ってみることが大切です。相手が追い越しながら睨んできたり、追い越しざまに併走してくる可能性もあります。そのような場合には相手の気を静めるために会釈したり手を挙げたりして場の収拾を図りましょう。

前方からの煽り運転

【状況】
前方の車が明らかな嫌がらせとして急ブレーキを繰り返したり、蛇行したり、場合によっては停車して道を塞ぎます。

【回避方法】
前方からの煽り運転は後方からのものよりも危険性が高いと言えます。相手は走り去ることが出来るにも関わらず執拗に煽り行為をしてくるからです。このような場合には、十分な車間距離をあけるとともに、道路脇に避難できる施設などがないか探しましょう。同乗者がいれば走行中であってもすぐに110番通報を行ってください。電話機の音声コントロールが可能なら、走行中であっても運転者が110通報をしましょう。

ドアの施錠と窓閉め

煽られている状況に陥ったら、ドアを全て施錠し窓は全て閉めてください。

車のドアは施錠をすれば絶対に開きませんし、窓は強化ガラスなので簡単に割れるようなものではありません。施錠されて窓が閉まった車の中にいるだけで、まずは最低限の安全を確保できたと考えて良いでしょう。

ドアの施錠は煽り運転の対策だけでなく停車中の強盗対策にも有効です。

車に乗ったら施錠する。これは自動車の防犯対策の鉄則です。

運転中の対処法

煽り運転の主な行為は、異常な車間距離で背後から迫る、横に並び接近する幅寄せ、前方からの急ブレーキ、パッシングやクラクション、窓を開けてからの罵声などです。

こういった行為は、される側にとっては尋常ではない恐怖感と焦燥感を感じます。

こういった場合に有効な手段は次の通りです。

警察署や交番に駆け込む

最寄りの警察署や交番に駆け込むのが最も確実な対処法です。

例えどのような理由があったとしても、煽り運転は許されるものではないし、それは煽っている側もわかっています。

煽り運転をされていると感じたら、最寄りの警察署や交番に行きましょう。警察署や交番の前に停車すれば、相手は必ず諦めます。

こういった万一に備え、普段行動する範囲の警察署や交番の場所は、事前に把握しておくとことをお勧めします。

警察署や交番の場所がわからないといった場合にはスマートフォンやカーナビを活用する方法もあります。

例えばiPhoneの場合なら、以下の手順でスマートフォンに触らなくても声で指示するだけでナビゲーションを開始します。

– iPhoneの音声操作で近くの交番を探す方法 –

「ヘイ、シリ」

「近くの交番に案内して」

「案内して」

Androidでも同様の機能があったはずです。

スマートフォンなら運転中に画面を見たり、スマートフォンに触れなくても、音声で目的地を検索してナビゲーションを開始できます。いざという時のために普段からこういった活用方法も練習しておきましょう。

スマートフォンがなく、警察署や交番の場所もわからないといった場合は、とにかく賑やかなエリアや駅に向かいましょう。そういったエリアには必ず交番が点在するはずです。

110番通報をする

運転中であっても、音声でスマートフォンに指示して110番通報ができます。110番が繋がれば、警察は通報者の現在位置を瞬時に把握します。移動している車であっても同様です。警察に場所を知ってもらっているというだけで安心感が違いますし、場合によってはすぐに付近のパトカーを急行させるはずです。

運転中なのでスマートフォンはスピーカーにして手には持たず、110番をして状況を伝え、指示を仰ぎましょう。

また、こういった場合に備え、音声でのスマートフォンの操作方法も練習しておきましょう。

– iPhoneの音声操作で110番通報する方法 –

「ヘイ、シリ」

「110番に電話して」

人の多い場所に避難

コンビニや飲食店など、人が多いところに非難すれば、人がいない場所よりも安全かもしれません。

とはいえ、あなたのトラブルを誰かが積極的に助けてくれるという期待は持たないほうが賢明です。実際にコンビニで停車し、その後口論が発展して刺傷事件に発展したケースもあります。

「あおられた」男性刺殺未遂で男を逮捕 相模原

人が多い場所は、人が少ない場所よりも安全という程度で認識しておくべきです。相手の性格や興奮状態によっては効果がないこともあるので覚えておいてください。

高速道路では料金所へ

高速道路で煽られた場合、まず絶対に路上で停車しないことが大切です。

高速道路では一般道と違い、路上で停車している車が存在しないことを前提に皆が運転しています。こういった中で停車表示もないまま車道で停車すると、大きな事故に発展しかねません。

高速道路では路上には絶対に停車せず、煽り行為が続くようなら近くの料金所に向かいましょう。料金所には必ず人がいますし、大きな料金所なら警察もいる場合があります。料金所ではETCゲートを使用せず、人がいるゲートで停車して状況を伝えましょう。必ず助けてくれるはずです。

自宅や知人宅に逃げ込むのはNG

あまりの恐怖感で、自宅や知人宅に逃げ込みたくなるかもしれません。

しかしそういった場所に逃げ込んだり、向かうのは避けたほうが賢明です。相手に生活の場所が知られてしまうと、さらなるトラブルに見舞われるかもしれませんし、知られたという事実で、以降も安心した生活が送れなくなる可能性があります。

煽り運転をされたら、自宅へ向かっていたとしても帰宅は一旦やめて、警察署や交番へ向かうようにしましょう。また、警察署や交番がわからなければ、出来るだけ人が多く住んでいる方角や、駅の方角に向かいましょう。そのほうが警察署や交番が多いはずです。

停車後の対処法

前に割り込んで停車させられたり、信号や渋滞で停車した場合、激高した相手が降りてきて、怒鳴ってきたりドアやガラスを叩いてきたりするかもしれません。

こういった場合は、絶対にドアや窓を開けてはいけません。ドアは全て施錠した上で、窓は全部閉めておいてください。車のドアは施錠されていればそう簡単に開くものではありません。窓も、車のガラスは非常に強度があるので、手で割れるようなものではありません。まずはドアを全て施錠し、窓を全部閉めて、最低限の身の安全を確保してください。

安全の確保が終わったら、すぐに110番通報をしてください。警察が通報から駆け付けるまでには長くて15分ほど、場所によっては20分以上かかるかもしれませんが、その間は何をされても相手にせず、一番安全な車内に留まることが大切です。→覚えておきたい110番通報時に現在地を伝える4つの方法

ドライブレコーダーは必要か

ドライブレコーダーは防犯カメラと同様に、その場の状況を動画として記録できるものです。

ドライブレコーダーは煽り運転の証拠を残すことは出来ますが、煽り運転をされているその場で自分を守ってくれるものではありません。

そういった意味で、煽り運転から身を守るためにドライブレコーダーが役に立つとは言えませんが、後々に被害届けを出したり、煽り運転の事実関係を争うような事になれば、記録映像はとても役に立つでしょう。

また、本来の目的は事故の状況の記録なので、一般的なドライブレコーダーは前方しか記録できません。煽り運転の場合には、後方や横から煽られる場合もあり、そういった場面では前方撮影のドライブレコーダーでは思ったように記録が残りません。煽り運転を意識してドライブレコーダーを装着するなら、前後左右の周囲360°を記録できるドライブレコーダーもあったはずなので、よく探してみてください。

なお、交通事故などでは前方の信号の色や、事故前後の前方の状況などは非常に重要な証拠となります。煽り運転の対策だけでなく、万一の事故で理不尽に不利になるリスクを避けるためにも、ドライブレコーダーは装着しておくことを強くお勧めします。

相手を撃退しなければならない場合

全てのドアを施錠し、窓を全て閉めたとしても完全に安全ではありません。

煽ってきた相手は薬物を使用していたり、飲酒で興奮状態になっていたりして錯乱状態にあるかもしれず、いくら丈夫な車の窓ガラスであっても石やブロック、固い棒、ハンマーなどを使えばいとも簡単に割れてしまいます。

例え停車してすぐに110番通報をしていたとしても、パトカーが到着するまでには一般的には15分、長い時は20分以上かかります。

その間は、自分や同乗者の安全は自分で守るしかありません。

窓を割られた場合、相手とは手を伸ばせば届くほどの至近距離だし、車の車内であることが逆効果となり逃げることが出来ません。窓を割るくらいなので、当然相手も正常ではないと考えるべきです。

こういった場合に、相手を撃退するには護身用品を使用する以外に方法はありません。

可能性は限りなく低くとも、実際に起こりうるケースです。

もしもそういった危機的状況に陥れば、無防備なのか、自衛手段があるのかでは天地の差です。

最悪の場合を想定し、未然に備えることも確実に身を守るためには大切なことです。

最後に

今回は、煽り運転の対処法として現実的にどうのような方法があるのかを解説しました。

いわれのない理由での突然の煽り運転は、だれでも恐怖感からパニックになるものだと思います。パニックになる前に、今回の対処法を思い出し、可能な限りの対処をして身の安全を確保しましょう。

まずは煽り運転被害に遭わないように周囲に礼儀をもって円滑な運転を心掛ける。それでも煽り運転の被害に遭ったら慌てず焦らず車のドアを全て施錠し、窓を閉め、交番に駆け込むか110番通報をする。

これが現在のベストな煽り運転対処方法です。