現実的な高齢者宅のアポ電強盗対策
最近高齢者宅の強盗が相次いでます。
「アポ電強盗」と言われているこれらの強盗は、犯行前に電話をかけてきて現金の有無などを確認し、強盗を行う手口です。アポイントメント=面会や会合の約束という言葉からアポイント電話強盗、すなわちアポ電強盗と言われているようです。
電話による犯罪は、これまではオレオレ詐欺のように、電話を使って被害者に自主的にお金の支払いを促すものでした。しかしここにきて、電話の後に強盗を行うという手口に変化してきています。そして、オレオレ詐欺同様に高齢者がターゲットとなり、自宅に押し入り、緊縛し、金品を奪うという凶悪な手口になっています。さらに2019年2月28日には東京江東区で強盗殺人という最悪の事件まで発生しました。
今回はこのような状況を踏まえ、高齢者が自宅でどのように強盗対策が可能なのかを現実的に考えてみます。
大前提:防犯カメラは役に立たない
強盗対策として真っ先に思いつくのが防犯カメラという方もいると思います。
ここでまずはっきりとさせておきます。
防犯カメラは犯罪を記録するためのものであり、当事者である被害者を救ってくれるものではありません。
この記事では、実際に強盗の被害者本人が身を守るためにどうすべきかという点に焦点をあてています。
「被害者が強盗から身を守る」という意味では防犯カメラは全く役に立ちません。
固定電話は使用をやめる
まずは固定電話の使用をやめることを検討してみましょう。
高齢者宅の皆さんの中には、着信番号の表示機能がない固定電話を使っている方もいるかもしれません。これでは電話に出なければ電話の相手がわかりません。
アポ電強盗の一番最初の段階は電話です。アポ電強盗を防ぐためには、かかってきた電話に出るか出ないかの判断が大きなポイントになります。
携帯電話なら迷惑電話の撃退なども設定が可能ですし、着信があれば必ず番号が表示されるので、誰からの電話なのかを通話前に知ることができます。つまり電話に出る前に、電話に出ないという判断が可能になります。さらに携帯電話なら非常時にワンタッチで110番したり、機種によっては防犯ブザーを鳴らしたりも可能です。
現在の社会にはもう固定電話は必要ありません。携帯電話(スマートフォン含む)だけで生活には十分です。使い方は至って簡単なので心配はいりません。
※東京江東区で強盗殺人では強盗犯が犯行前に電話線を切断しています。電線に頼った固定電話では、電話線を切断されただけで孤立無援になり大変危険です。そういう意味でも、電話線に頼らない携帯電話の使用をお勧めします。
知らない番号の電話には出ない
知らない番号からの電話に出ないという対策は、高齢者にとってもシンプルでわかりやすい対策です。
アポ電強盗を始め、オレオレ詐欺の被害防止についても同様に、最も効果があるのは知らない番号からの電話には出ないという方法です。これが実践できれば、犯人はそもそも犯行を始めることができません。
高齢者の方にはご存じない方もいるかもしれませんが、現在の電話は全て、電話がかかってきた時に同時に相手の番号もわかるようになっています。つまり、呼出音が鳴っていてまだ電話に出ていない段階でも、その電話がどの番号からの電話かがわかります。
固定電話を使用されている方は(固定電話自体があまりお勧めできませんが)、電話帳機能が付いた画面付きの電話機を使用し、知人や日頃関係のある番号は全て電話帳に登録してしまいましょう。そうすれば、電話の着信と同時に、かけてきた相手の番号が電話帳機能に登録されている番号ならば、画面には電話帳機能で登録した名前が表示されます。結果、名前が画面に表示されず番号だけが表示される電話には出ないというシンプルな迷惑電話対策が可能になります。電話帳機能への登録方法がわからなければ、ショップや知人に相談して協力してもらいましょう。そして、今後は知っている番号からの電話にしか出ないという事も、周囲の方へ告知しておきましょう。
携帯電話も同様に電話帳機能があり、電話がかかってくると相手の番号や名前が画面に表示されますので、電話に出る出ないの判断ができます。知らない番号からの電話には出ず、無視を徹底することが大切です。
アポ電強盗を防ぐ初期段階として一番大事なことは、犯人からの電話に出ないということです。
相手が誰であっても電話では個人的なことは一切言わない
次に大事なのは、アポ電強盗(オレオレ詐欺も含む)に知りたい情報を渡さないことです。
犯人は電話を使い、効率的に犯行ターゲットを絞っています。ターゲットにされないために重要なのは個人情報を絶対に言わないことです。
世間でよく言われている詐欺電話として身内を名乗るが代表的ですが、それだけではありません。犯人は警察、銀行員、弁護士、役場の職員、医師や看護師、救急隊員などありとあらゆる名を語り、信用させようとします。また、電話の理由も事故を起こした、会社のお金に手を付けた、何かの賠償がある、経営資金が足りない、急病になった、公的な還付金がある、新元号に関する切替、口座の悪用があった、などなど、考えられる限りの理由を言い騙そうとします。
こういった一切の犯罪被害に遭わない方法は個人情報を電話では絶対に言わないと決めることです。
個人情報の例を以下に挙げますが、これを言わないだけで犯罪被害は大幅に減ります。逆に言うと、こういった情報を知るために犯罪者はそれらしい理由を付けて電話してくるわけです。
- 名前
- 住所
- 年齢
- 一日の行動
- 所持金額
- 使用している金融機関
- クレジットカードやキャッシュカードの番号
- あらゆる暗証番号
少し項目が多いのですが、是非覚えておいてください。
「名前」も個人情報だということは、電話に出るときも「はい◯◯です」はダメだということです。これからの時代は「はい、もしもし?」が正しい電話の出かたになります。
それでは少し例を挙げましょう。
(例1)相手が配送業者を名乗る
相手:お客様へのお荷物があるのですが、伝票が雨で滲んでしまって電話番号以外が読めません。申し訳ありませんがお名前とご住所をお教えいただけませんか?
(例2)相手が銀行員を名乗る
相手:◯◯銀行ですが、お客様の口座の暗証番号が盗まれました。至急口座を凍結する必要があります。盗まれた暗証番号がお客様のものか確認するために照合の必要があります。今すぐ口座を凍結するために、お客様のパスワードをおっしゃってください。
(例3)相手が弁護士を名乗る
相手:◯◯法律事務所の弁護士の◯◯です。昨日、息子様が◯◯の疑いで身柄を拘束され、◯◯拘置所で拘留されています。拘留中なので私が代理人となりますが、保釈金◯◯円を支払うことで保釈が可能です。息子様が希望されていますので、すぐに支払いをお願いします。
いかがですか?例を見ただけで、これまでならすぐに個人情報を言ってしまいそうではないですか?
私が軽く考えただけでも、すぐにこれくらいは思いつきましたし、時間さえかければいくらでも思いつきそうです。これが詐欺の集団ならば、さらに手の込んだ、信じてしまうような理由を考えついても不思議ではありません。
こういった詐欺電話の被害に遭わない一番の方法は「電話では個人情報を一切言わない」と決めることです。
しっかりと覚えておきましょう。
訪問者を家に入れない
どのような理由があろうとも、初対面の人を家に入れないことはとても大切です。初対面に関わらず、顔見知りでも素性の知れない相手なら同様です。
犯罪者を家に入れさえしなければ、強盗は成り立ちません。そしてアポ電強盗を想定する限り、犯人は何かと理由をつけて訪問し、玄関から入る可能性が高いと言えます。つまり、被害者が自ら強盗犯を招き入れる可能性が高いということです。(訪問者の危険性と正しい対処法については女性の一人暮らしや一人在宅時の危険を防ぐ5つの訪問者対応法でも詳しく解説しましたが、高齢者宅でも同じことが言えます。)
知っている人でない限り招き入れない、普段は必ずドアに施錠しておく、知らない人の応対はドアチェーンをしたまま対応する、ドアチェーンがない場合には設置を考える、知らない人を自宅に招き入れる場合には信頼できる第三者に同席をお願いする、などが大切なポイントです。
自宅への侵入を防ぐ事は強盗対策の基本です。そしてアポ電強盗の場合には事前に電話があることから、何かしらのそれらしい理由を信じ込ませ、自ら犯人を招き入れてしまう危険性が高く危険です。
知らない人は絶対に家に入れない。玄関も開けない。
これを徹底するだけで、強盗被害のリスクは大幅に軽減します。
携帯電話やスマートフォンを練習しておく
固定電話があってもなくても、この際携帯電話は持ち、利用するようにしましょう。
東京江東区で強盗殺人では、犯人は犯行前に電話線を切っています。自宅が固定電話だけなら、この段階で孤立無援です。助けを呼ぼうにも、110番通報しようにも、固定電話が使えません。
こういった場合に携帯電話があれば通報などが可能です。強盗犯も携帯電話の電波を切ることは出来ません。
以前なら固定電話が主電話であって、携帯電話は補助的な感覚でした。恐らく高齢者の皆さんは、今でもそういった感覚をお持ちなのではないでしょうか。しかし、現在では携帯電話を主電話として利用しても全く問題ないほど環境が行き届いています。強盗に電話線を切られてしまう、何かの災害で電話線が切れてしまう、そういったリスクを考えると、むしろ携帯電話のほうが固定電話よりも信頼性が高いと言えます。
携帯電話を使用し、できれば固定電話は解約しましょう。
現在の携帯電話は通報するだけで居場所も通知され、迅速に警察や救急車が通報場所に来ます。万一のときにすぐに110番や119番ができるように使い方を練習しておきましょう。防犯ブザーが付いている機種は、ブザーの鳴らし方も練習しておいてください。使い方は購入したショップに教えてもらうか、周囲の詳しい人に教えてもらいましょう。
最悪の場合を想定する
最悪の場合、強盗を家に招き入れてしまい、電話は固定電話しかなく、電話線は強盗に切断されていたとします。こういった場合にはもう為す術もなく、されるがままになっていいのでしょうか。
アポ電強盗では金品を奪うだけではなく、殺人まで起きています。
このような最後の最後に、生き残るための抵抗手段が一つだけあります。それが護身用品です。
護身用品とは、高齢者や女性など強盗と一対一ではおよそ太刀打ちできない方が、相手を撃退し、行動不能にし、逃げたり通報できる時間を確保できる唯一の道具です。
中でも催涙スプレーは高齢者の強盗対策には最適な護身用品で、殺虫剤のように相手の顔に噴射するだけで、相手は最低30分以上は目を開けられず犯行できなくなります。スプレーなので誰でも使用でき、特別な練習も必要ありません。
護身用品は消火器のようなものです。皆さん火事にはならないだろうから消火器はいらないと考えますか?万一の火事に備えて消火器を準備するものと思います。護身用品も同様に、万一に備えるものです。もし強盗に遭ったら、家に侵入されてしまい、通報も出来なければ、護身用品さえあれば最後に自分の命を守ることができるのです。
最後に
電話に出ない、電話には適切に対応する、家に招き入れない、すぐに通報するなど、段階を追って様々なアポ電強盗の対策があります。どれも重要な対策です。アポ電強盗の前段階で、正しい対処で強盗を防ぐことが最も大切です。是非今回の内容を読み返し、日頃の生活に活かしてください。
そして最終手段の催涙スプレーも、この際に検討することをお勧めします。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません