特殊警棒の打撃強度比較テスト
特殊警棒の打撃における強度テスト
特殊警棒には様々な材質や構造があり、曲げ強度や諸データもメーカーが公表しているものから非公開のものまで様々です。当店では販売店の自主テストとして代表的な特殊警棒を用い、出来るだけ公平かつ客観的に強度テストを行いました。
テストの目的
現在特殊警棒の業界では強度を表す方法として「曲げ強度」が用いられており、数百キロから数トンという重さで表しています。この「曲げ強度」は支点と支点の間に加重をかけ、どれだけの加重に耐えられるかという数値です。
しかし、実際には特殊警棒は打撃に使用します。打撃では警棒の一部に瞬間的に強い力が加わります。強い衝撃が瞬間的に加わった時の強度を、はたして上図のような単なる荷重テストの結果で判断してよいのか疑問でした。
そこで今回は、実際に商品の警棒を使用した打撃テストを行いました。
テストの条件
警棒の長さ
当店が最も推奨していると同時に最も販売実績のある21インチを使用する事にしました。なお、国産警棒は16インチの商品しか存在しないためやむを得ず16インチとしました。
警棒の材質
以下の7種類の材質をテストする事にしました。
- 一般スチール
- 4135カーボンスチール H-802B
- 4140鋼
- TMMアルミ合金(メカニカルロック) H-201B
- TMMアルミ合金(削り出し) H-301
- 国産一般スチール(推定)
- 国産アルミ合金(推定)
打撃対象
打撃を受ける物としていろいろ考えましたが、今回は段ボール箱の中にコンクリートブロックを入れてみました。 重さも十分で、強さも人の足の骨より強いだろうと判断しました。 実際に21インチ警棒のフルスイングでもびくともしない重さでした。
加える衝撃
これだけは完全に同一の力とはいきませんが、全てのテストにおいて満身の力でスイングするものとしました。 テスターのスタッフの腕力は、一般成人男性の平均を軽く上回る事は間違いありません。彼はベンチプレスで100kgのウエイトを楽にリフトし、体重70kgの私(店長)を楽々と持ち上げ振り回す事ができます。
テスト結果
それぞれ1回ずつ打撃を行いました。
その結果は以下のように興味深いものとなりました。
結果の前の大前提として
今回スイングを担当したスタッフは一般男性よりはるかに強い腕力を持っており、結果としてそれぞれの警棒は写真のようになりました。従って一般的な腕力の方は最大でも写真の状態以下の曲がりで済みます。
それぞれの結果
一般スチール - 21インチ
衝撃が加わった部分から大きく曲がってしまいました。2〜3回以上打撃を繰り返すと折れる可能性があります。
TMM4135カーボンスチール - 21インチ H-802B
曲がりは認められませんでした
4140鋼 - 21インチ
曲がりは認められませんでした
TMMアルミ(メカニカルロック) - 21インチ H-201B
衝撃が加わった部分から大きく曲がってしまいました。2〜3回以上打撃を繰り返すと折れる可能性があります。
TMMアルミ(削り出し) - 21インチ H-301
衝撃が加わった部分から曲がりが認められますが、メカニカルロックタイプ程の大きな曲がりではなく致命的な印象は受けません。削出し加工の強さを感じました。
国産スチール(推定) - 16インチ
1段目根元付近に若干の曲がりが確認できますが、ほとんど曲がりませんでした。他の警棒とテスト条件が違い16インチでのテストなので、21インチに比べると加わる衝撃が弱かったものと考えられます。
国産アルミ合金(推定) - 16インチ
この警棒だけ唯一2段式(他の警棒は全て3段式)なのですが、2段目中央付近に若干の曲がりが認められただけでした。この警棒のテストでは、上記の国産一般スチールと同様に16インチなので21インチ警棒に比べると受ける衝撃が弱かったものと考えられます。アルミの割に総重量がスチールと大差ない事からアルミそのものはかなり肉厚であると考えられ、2段式のシンプルな構造である事もこの強度に繋がっていると思います。
総評
今回の結果を考える上で、警棒にゆっくりと加重を加えるのか、瞬間的に大きな衝撃を加えるのかの違いは重要です。ゆっくりと加重をかける曲げ強度は各メーカーがデータを公開していますが、今回当店がテストをしたかったのは後者の衝撃テストです。当店では衝撃テストのほうがユーザーにとってより現実に近い結果であると考えます。
瞬間的な衝撃において金属の弾力はとても大切です。4135カーボンスチールと4140鋼の警棒が曲がらなかった理由を弾力にあると考えられます。4135カーボンスチールはカーボンの含有量が多く、それは金属の弾力性に貢献します。4140鋼も4135には劣りますが組成自体は一般スチールに比べると4135に近い組成となっています。
これらの理由から、一般スチールはぐにゃりと曲がりましたが4135と4140は曲がらなかったのでしょう。この件についての細かな検証は、打撃の瞬間を高速カメラで撮影すると良いのでしょうが、残念ながら機材がないため検証できません。
アルミについては全くといっていいほど弾力がありませんので単なる素材の強さが結果に現れていると考えられます。ただ、16インチと21インチでは手元からインパクトポイントまでの距離に大きな違いがあり、その差は打撃点の速度と衝撃力に大きな違いを生むと思われます。従ってTMMの21インチアルミと国産の16インチアルミの結果を全く平等に比較する事はできません。ただし、通常の対人戦闘においてはTMMのアルミ削り出しも国産のアルミも曲がる事はないでしょう。とすればアルミ特有の「軽さ」は普段携帯する上でこの上ないメリットになります。
では警棒はどのように選ぶべきか。
基本的に対人においてはどの警棒も曲がらないか、曲がってもわずかなものでしょう。相手がバットや木刀を持っていて、警棒とそれらが正面からぶつかると写真のような曲がりが起きるかもしれません。そもそも警棒はそれらの武器を相手に戦うものではありませんし、そういった最悪の状況は避けるべきです。
軽量であり狭い場所でも簡単に伸ばせ、確実にロックのかかるTMMのメカニカルロックアルミ警棒はやはりベストな選択です。何度叩いても曲がらない警棒も大切ですが、万が一の状況で場所や状況を選べない時に、最も確実に使用できるのがこの警棒です。たった一度の反撃を確実なものとし、若干曲がってもその場からの避難を確実なものにする事は最重要目的です。
従来の操作感や重量感が欲しいという方はTMMの4135カーボンスチール警棒が最適です。今回の衝撃テストでは4140鋼と同等の結果ですが、素材の性能としては対衝撃性の面で4140を30%も上回っています(4140は固すぎて折れたという報告が多数あります)。価格面でもアルミ警棒に比べると手頃感があります。携帯しない、延ばして置いておくという方にもお勧めです。
H-801B(16インチ) / H-802B(21インチ) / H-803B(26インチ)
後記
今回のテストは護身用品専門店として、ユーザーの視点から全メーカーの警棒を「対衝撃性」という点に絞り客観的に試験しました。
それぞれの結果を当店が独自に評価し解説をしていますが、これは全て当店の主観的な解説です。
各メーカにおいてはそれぞれ重視するポイントがあると思いますので、この衝撃テストの結果が全てではないという点をご理解頂ければ幸いです。
本内容、判断基準について意見や指摘など大歓迎です。気軽にご意見をお寄せ下さい。
特殊警棒に関するコンテンツ
特殊警棒に関する当店の人気コンテンツです。是非あわせてお読みください。