初めてでもわかる!催涙スプレーのマメ知識
これさえ読めば催涙スプレーの基礎知識は完璧!
護身用品の専門家が解説する催涙スプレー豆知識の決定版。
このページの目次
はじめに
皆さん、「催涙スプレー(さいるいスプレー)」って知っていますか?
催涙スプレーはスタンガンや特殊警棒と並ぶ代表的な護身用品なので「催涙スプレーくらいは聞いたことくらいならある」といった方も多いのではないでしょうか。
「催涙スプレー」は正式な名称ですが、その他には通称として「防犯スプレー」や「撃退スプレー」とも呼ばれています。
催涙スプレーはボタンを押して相手にスプレーするだけなので、使い方がとても簡単です。
普段から私たちは、殺虫剤やヘアースプレーなどでスプレー製品に慣れ親しんでいます。初めて護身用品を手にする方にとって、一番自然に理解でき使用できるのが、この催涙スプレーです。
催涙スプレーは、単純に相手の顔面にスプレーするだけで100%確実に相手を撃退できる、簡単かつ最も優れた護身用品です。
そうは言っても催涙スプレーも護身用品です。万が一の時に自分の命を守る大切なツールですから基本的な知識は必要です。
今回は初めて催涙スプレーを検討するという方を対象に、催涙スプレーについて基本的に知っておきたい内容を説明します。少し長くなりますが必ず役に立ちます。しっかりと読みください。
簡単・確実・安全 催涙スプレーの効果と安全性
まず催涙スプレーで一番気になるのは、その効果だと思います。
「ただ単にスプレーしただけでどれくらい効くの?」「本当に身を守れる?」こういった質問を何度となく聞きました。同時によく受ける質問が「噴射を受けた相手に健康被害はないの?」という内容です。
危険なシーンでは確実に身を守りたい、でも相手を傷つけなくない、そういった矛盾する気持ちの表れですね。でも安心して下さい。催涙スプレーはその矛盾した要求を満たしています。
効果
催涙スプレーが噴射した催涙剤が相手の顔に命中し、催涙液が一滴でも目に入ればそれで効果は十分です。相手は目を針で刺されたような猛烈な激痛で目が開けられず周囲が見えなくなります。さらにその効果が2〜3時間続きますので、安全にその場から逃げることができます。
安全性
催涙スプレーの作用は時間が経つとともに自然に治ります。感覚としては激辛カレーを食べたあとの舌に残る痛みに近い感覚です。催涙スプレーによる深刻な怪我や後遺症の心配はありません。
催涙スプレーは誰でも使用でき、効果は確実で、安全な護身用品です。
(動画は催涙スプレーの威力を体験検証した店長の様子。このあと健康上の被害や後遺症は全くなかった。)
催涙スプレーの刺激成分の種類
催涙スプレーは刺激成分が入った催涙剤を噴射します。
現在国内で販売されている催涙スプレーでは、この刺激成分は二種類存在します。
OCは自然由来の成分で唐辛子の辛み成分の濃縮したようなものであり、CNは化学成分で大戦時の毒ガス兵器由来です。両者とも人体には無害と言われていますが、実際に最も強力で安全なのはOCです。
CNの実際の効果や安全性には疑問が残るといわれていますので注意が必要です。
催涙スプレーはOCを使用した製品を選びましょう。
OC
OCは強力な作用があり、泥酔者や薬物中毒者などでも問題なく作用し、熊や野犬など動物にも同様に高い効果があります。安全かつ強力でオールマイティーに対処できる、それがOCガスです。
(写真は代表的なOC催涙スプレーであるF-605)
CN
CNガスは泥酔者や薬物中毒者に対する効果に疑問があるとされるばかりでなく、化学成分由来のため皮膚がただれるといった副作用の懸念もありお勧めできません。
(写真はCNを使用した催涙スプレーの一例)
対人用として求められる噴射方法と噴射距離
催涙スプレーは簡単に言うと害虫に殺虫剤を噴射するように相手を撃退できます。
しかし、殺虫剤のイメージそのままでは通用しません。なぜなら相手は人間だからです。
殺虫剤のイメージでは人間相手には使用できない
殺虫剤を虫にかける様子を想像してみて下さい。
スプレー缶を持ち、虫に向けて構え、虫に噴射しますよね。その時、スプレー缶は虫にどれくらい近づいていますか?50cm?30cm?もっと近く?
そう、殺虫剤やヘアースプレーなど日用品のスプレーは、超至近距離での使用が前提になっています。
でも人間相手にその距離まで近づけると、相手の手が届く距離になってしまいます。そうなれば誰でもスプレーを払いのけたり、腕を掴むでしょう。
虫との大きな違いは相手が人間であることです。そのため相手との間には十分に安全な距離が必要です。
ではもう一度イメージしてみましょう。
虫から2mとか3m先離れて殺虫剤を噴射して虫に届くでしょうか?・・・もちろん届きません。
さらに殺虫剤を風のある屋外で横風を受けながら使用したら虫に命中するでしょうか?・・・噴射した殺虫剤はすぐさま風に流され、虫との距離が30cmでも命中するか疑問です。
何が言いたいのかというと、まずは日用品のスプレーの固定観念を捨る必要があるということです。
催涙スプレーは水鉄砲に近いイメージが必要
催涙スプレーの噴射イメージに関しては、水鉄砲のイメージをスタートにします。
(写真は昔ながらの竹筒を利用した水鉄砲)
水鉄砲は水を棒状に噴射しますので飛距離もあり風にも強いですよね。このような性能が催涙スプレーにも求められるわけです。しかし水鉄砲のように一本筋の噴射では相手の顔に命中させにくく狙いを外す可能性があります。
催涙スプレーに最も適した噴射方法
そこで、水滴状の催涙液を若干拡散させながら噴射するジェットミストという噴射方式が登場しました。命中させにくい液状でもなく、風に弱く飛距離が短い霧状でもない、それぞれの欠点を補う理想的な噴射がジェットミストなのです。
ジェットミストの催涙スプレーは風があっても3mは十分に命中します。しかも距離3mにおいておよそ直径30cm〜40cmほどの範囲に広がりますので命中させやすく、催涙スプレーにおいて理想的な噴射方法です。
(動画はジェットミスト噴射モデルで代表的な催涙スプレーF-605)
操作方法と片手操作の重要性
催涙スプレーはとても強力な護身用品なので、誤操作や誤噴射は確実に防がなければなりません。
そのため、催涙スプレーには必ず安全装置が付いています。それぞれの催涙スプレーにはその構造に合った適切な方法で安全ロックを解除することで噴射できる仕組みになっています。
噴射方法は一般的なスプレー製品と大差ありません。単に噴射ボタンを押すだけです。しかし、安全装置の解除に一手間必要なのです。そこで注目したいのが解除操作の方法と手間です。手間とは、安全ロックの解除を片手でできるのか、両手が必要なのかの違いです。
安全装置解除が片手で出来るか
(例)
あなたは夜道を歩いていて、不審者対策用として催涙スプレーを持っていたとします。
それを洋服のポケットやバッグに入れており、手を入れればすぐに催涙スプレーを持つことができるとします。
安全装置の解除に両手が必要な場合は、いざ使用する際に催涙スプレーを取り出し両手を使って安全装置を解除する必要があります。催涙スプレーを取り出した手とは別に、もう片方の手を使用して安全装置を解除するという余計なワンアクションが必要ということです。
(写真は安全装置の解除に両手が必要な催涙スプレーの例)
片手で解除できるタイプの催涙スプレーは、両手を使った解除操作が不要です。手で催涙スプレーを握ってそのまま安全装置を解除できます。つまり、万が一の時には取り出すと同時にすぐに使用できるわけです。
この片手か両手かの時間的ロスは、万が一の安全性に大きく作用し、パニックを起こしていればなおさらはっきりと差が現れます。
最も適している安全ロック構造はフリップトップ
危険を前にしてオロオロし、安全装置の解除に戸惑っては危険が増すばかりです。このような視点で考えるとフリップトップという構造の催涙スプレー(F-605〜F-608)は非常に良く設計されています。
(写真はフリップトップ構造の催涙スプレーを操作する様子。片手だけで瞬時に噴射が可能。)
フリップトップは、迷わず一瞬で、しかも片手だけで安全装置の解除から噴射まで可能です。
噴射方向の確実性は重要ポイント!
催涙スプレーは、いざ噴射しても相手の顔面に命中しなければ期待した効果は得られません。
そのために、催涙スプレーの噴射方向のわかりやすさはとても重要です。
- 催涙スプレーを使用するシーンでは、精神的に慌てた状態なので素早くロック解除できないかもしれません。
- 夜間などでは暗くてスプレーの噴射口が見えず、正面に噴射口を向けて構えるまで手間取るかもしれません。
- 襲われそうなのにいちいち噴射口を確認するために、相手から目をそらす余裕なんてないかもしれません。
催涙スプレーの噴射方向はとても重要、だけど確認は難しい。ではどうすればいいのか。実はその難題を構造的に解決している催涙スプレーがあります。
フリップトップという構造を持った催涙スプレー(F-605〜F-608)は、指を噴射ボタンの上に置くために指を挿入する方向が決まっています。という事は指をボタンに置ければ、すなわち反対側が噴射方向という事になるわけです。この構造であればどんなに慌てていても、暗くても、催涙スプレー本体を確認する余裕がなくても、間違うことなく確実に相手めがけて噴射できます。
(写真はボタン部の構造から噴射方向に間違いが起きないフリップトップ構造)
噴射方向という視点からもフリップトップは理想的な操作方法です。
先入観は危険!催涙スプレーの正しい持ち方と狙い方
スプレー缶というとどんな持ち方をしますか?殺虫剤でもヘアースプレーでもカラースプレーでも好きなものを想像してください。そう、私も皆さんと同じ。手に缶を持ってボタンは人差し指で押します。これが私たちが慣れ親しんできたスプレー缶の使い方ですね。
でも催涙スプレーではこの持ち方はダメです。催涙スプレーでは狙う、命中させるという大きな目的があります。日頃使っているような持ち方では正確に狙うことはできません。
正しい持ち方はまず、催涙スプレーは缶ジュースを持つように親指を除く四本の指と手の平でしっかり握ります。そしてボタンは親指で押します。この持ち方で催涙スプレーを持った腕を真っ直ぐ伸ばし、腕で相手を狙うと、自然と噴射口も相手に向きます。腕を向ければ自然と狙えている、この持ち方を徹底するように心掛けて下さい。
噴射時には催涙スプレーの反動に注意しましょう。催涙スプレーは噴射力が高いため、反動で噴射方向が上に向く傾向にあります。ですので真っ直ぐに相手の顔を狙っても、実際には頭上の空中に噴射してしまう可能性があります。
催涙スプレーの噴射では、反動を考慮した狙い方をする必要があります。それはまず相手の胸元を狙って噴射し、すぐさま相手の顔を縦断するように頭頂部まで噴射する方法です。顔を横切るイメージです。胸元から頭頂部までさっと吹きかけるのですが、時間的には1秒ほどで十分です。この方法であればほぼ確実に相手の顔面を直撃でき、確実に目に入ります。
室内への充満や使用者への影響について
霧状(殺虫剤のようなイメージ)の噴射タイプの催涙スプレーは、室内で使用すると充満への危険が大きくお勧めできません。そうなると霧状噴射の場合、屋外では使い物にならず室内では充満するしで使えないのではと言われそうですが、全くその通りです。霧状に良い事などありません。
私が推奨するジェットミストなど液状を主とした催涙スプレーは室内で充満することはほとんどありませんし、使用者への二次的ダメージも軽微です。基本的に液状で噴射するので空気中への充満はありません。しかし対象に当たった時の跳ね返りやしぶきで、若干の催涙液が霧状になって室内に漂う可能性もゼロではありません。それでもわずかに漂った催涙飛沫の影響は軽微で、目に入った場合はタマネギを切った時と同じ程度に目がしみたり、吸い込んだら喉や鼻がツンとする程度で、動けなくなるといった心配は不要です。
催涙スプレーを使用したら目は薄目にし、呼吸は止めるか浅く呼吸する事で二次的被害をさらに最小限にできます。
屋内、屋外を問わず、催涙スプレーを使用したら、目は薄目にし、浅く呼吸しながら、使用場所から速やかに離れるようにしましょう。
残念ながら威嚇力はゼロに等しい
護身用品の役割の一つに「威嚇」があります。この護身用品を使うぞ、使うと痛い目にあうぞ、と威嚇を行い、直接の反撃をしなくても相手を退散させる最も平和的な解決方法です。
スタンガンは空中スパークによって、特殊警棒は伸ばした警棒を見せる事で効果的に威嚇できます。しかし残念ながら催涙スプレーにはそれほど大きな威嚇効果は期待できません。手の平サイズの小型缶を持っているだけでは相手を退散まで追い込む事はできないと考えて下さい。
催涙スプレーは誰でも簡単に使用でき、その効果は100%確実と余りある利点がありますが、万が一の時は威嚇だけでは済まず、必ず使用する必要があるのも事実です。
催涙スプレーを所有して危険に備える場合、威嚇はほとんど効果がなく、実際に噴射しなければ意味がないという点も十分に理解しておいてください。
本当に必要な状況では迷わず使うという決心が必要
どの護身用品でも同じなのですが、最終的に護身が成功するかどうかは護身用品を使うかどうかに懸かっています。
突然危険な目にあうと人間は恐怖と驚きのあまり動けなくなってしまいます。ですがあなたにはその危険に対処できる護身用品があります。危険な状況におかれたら護身用品を迷わず使う事。それが一番大事です。
日頃から、万が一のときは護身用品を迷わず使用する決意を心で何度も繰り返し、万が一の時には躊躇なく使用できるようにしておいてください。
所有や携帯における法律面での話
催涙スプレーは(スタンガンや特殊警棒も同様ですが)合法品です。購入にしても所有にしてもそれを制限する法律はありません。
ただし、一つだけ護身用品の持ち歩きに関係する法律があります。それが軽犯罪法です。
軽犯罪法については護身用品を持ち歩く心構えでも詳しく解説しています。
軽犯罪法とは一般的に私たちの日常における細かな生活ルールを定めた法律で、例えば「皆が並んでいる列に割り込んではならない」や「健康な者は働かなければならない」など、細かな項目が規定されています。ですから軽犯罪法を逮捕に使うと日本は逮捕者だらけになって大変な事になるのは想像できると思います。そこで軽犯罪法は濫用してはならない、基本的に逮捕に使用してはならない、と決められています。
軽犯罪法の中に護身用品に関わる記述があります。それが「正当な理由なく武器などを持ち歩いてはならない」というものです。
私たちは自分の身を守る事を「正当だ」と考えて護身用品を携帯します。しかし警察は「自分の身を守る事は正当ではない」と判断します。もし何らかの危害を加えられ、それに対処した場合には「正当防衛」として合法的に認められるのに、その危険に日頃から備えるのはダメだというわけです。
警察は自分の身を守るために警棒や防弾ベストや拳銃などを所持しているのに、私たち一般市民は丸腰でないといけないというわけです。そして「万が一の時には110番すれば15分で駆けつけますから15分待って下さい」と言います。不審者に襲われてようと、通り魔に追いかけられてようと、車で連れ去られようと、15分待てるでしょ?というわけです。このあまりにも現実とかけ離れた法律には憤りを覚えますが、護身用品を悪用する人がいる限り仕方のない事かもしれません。
ずばり言いますが、護身用品の外での携帯は軽犯罪法違反になる可能性があります。でも逮捕はされません。注意のみと思って下さい。問題は軽犯罪法を守るために危険に備えず丸腰でいることです。万が一の時、危険を目の前にして法律は私たちの命を守ってはくれません。
自分で自分の身を守る事、そのために備える事が正当だと思いますか?私は正当だと思います。正当だと思う方は護身用品を携帯して下さい。ただし目立たず隠し持つように。本来、護身用品は堂々と見せながら持ち歩くものではありませんので当然といえば当然です。
実は私が質問した警察官(私は機会があるたびに聞いています)のうち、およそ半数は「必要な人は目立たないように、職務質問しなくていいように隠して持ち歩いて下さい」と答えています。残り半数は「15分くらい待てるでしょ?」なので話になりません。
もしも警察官に質問されたら、堂々と「自分で正当だと判断した」と言うべきです。それでも警官が理解しない場合はきっぱり諦めて護身用品を提出します。逮捕などはないので心配はいりません。
もう一度言いますが、危険と一対一で対峙した時、その場であなたを守るのは護身用品しかありません。その時に軽犯罪法を守っていて丸腰だからといって、目の前の犯罪者が手加減してくれるわけでもなければ、警察が到着するまで15分間も犯罪者が犯行を待ってくれるはずもありません。
軽犯罪法を警察側の視点で解釈して「身を守るのは正当ではない」と思う方はともかく、「身を守る事が正当だ」と信じるのであれば護身用品は携帯するべきであり、やむを得ない場合は警察の没収に応じるしかありません。現在の日本の法律では、このように理解して護身用品を持ち歩くしかありません。
自分の命を守る備えのためにはある程度の覚悟も必要だという事です。でも結局は「目立たないように自然に」が一番なんですけどね。
あとがき
以上、催涙スプレーの初心者のため催涙スプレーをいろいろな視点から説明しました。基本中の基本ですが、知らない方には良い内容ではないかと思います。皆様のお役に立てれば幸いです。
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